ギュンター・ヴァント ブラームス 交響曲第2番
ギュンター・ヴァント指揮
北ドイツ放送交響楽団
(1983年録音)
こうやって気まぐれに聴いている音楽のレビューをする。
ギュンター・ヴァント(1912-2002)亡き今ではドイツの巨匠中の巨匠に数えられている指揮者だが、御多分にもれず、高齢になってやっと世界に名が出た感があった。
芸風は壮年期のケルン放送交響楽団とのシューベルトやブルックナーはかなり鋭角的でモダンなスタイルだったと思う。
その後この北ドイツ放送交響楽団のポストを得てから、かなり評価も高まって録音もまとまって出て来たと思う。
世の中で巨匠のイメージはどちらかと言うと古色蒼然というか、体制に寄っかかっているようなものがあるような気がするのだが、本当の巨匠は新しいものを創り出して来た人。
クラシック音楽の指揮者の世界も同じ。
巨匠カラヤンだってCDを開発するのに非常に熱心だったし、巨匠バーンスタインはウェストサイドストーリーで名を成しながらもクラシック音楽、特にマーラーの音楽の素晴らしさを誰よりも熱く伝えていた。
しかし、ヴァントにはそんなセンセーショナルなことはなく、かなり地道に歌劇場の下振りから始めて来た人。
そして音楽は加齢とともにどんどん研ぎ澄まされていったように思う。
このブラームスの録音は彼のキレのいい音楽が聴ける。
確かこのブラームス交響曲全集の録音の後、同じオケで再録音していたが、諸般の事情によりその音源は手元にはない。
これはヴァントの音楽に感じる共通のものだが、ロマン派の音楽だからといって、甘ったるく演奏させない。懐古主義的でもない。
往年の指揮者クレンペラーと方向が似ていなくもない。クールで醒めた目で音楽を見ているような。
悪く言うと人間味に乏しい表現をする指揮者。だからメジャーなスター街道は目指さなかったのかも。
しかし、別の言い方をすれば楽譜に忠実な表現をする指揮者。そして鬼のように音にこだわる。
このブラームスの交響曲第2番はどちらかと言うと明るくて牧歌的な表現、演奏が支持されることが多いような気がするが、ヴァントは徹底して音の硬質な響き、クリアさにこだわっているように感じる。
得てしてブラームスは重厚にそして熱くというイメージから聴くと、あまりにもアッサリ終わってしまうので、???と思う人もいるかもしれない。
でも、これ聴くとヤメラレナイ。
フォルテになっても混濁しない、ピアニッシモのピリピリとした緊張感、聴けば聴くほどモダンな解釈に気づく、などなど、さすが巨匠ではないか!とあらためて思うことしきり。
話はそれるが、以前最晩年に来日した公演の録音も聴いていた。
さすがに動的な表現はかなり後退していたと思うが、それ以上に音楽の透明度の凄さは、
録音からしかわからないが、チェリビダッケに通じるものがあるような気がする。
ところで、ブラームス全集、なぜ再録音の方は手放したか?
それはこの旧録音の方がテンポと響きのバランスが好きだから。それに現代的で若々しいし。それでいて全然熱くないところが凄いし。
ヴァントの音楽は今まで書いたことがなかったので、感じるままに書いてみました。