マーラー覚書その5 交響曲順マイベスト
さて、年末企画今回もマイベスト。
マーラーの交響曲+大地の歌のマイベストと聴いていないが気になる演奏を書いてみたいと思います。
なお、曲番のあとのニックネームは前島良雄氏の著作より、実際にマーラーが付けたものではないとのことなのでカッコ書きで書いてあります。
マイベスト交響曲第1番(巨人)
テンシュテット指揮シカゴ交響楽団(EMI LIVE)
バーンスタインの新旧両盤をおさえての堂々横綱入り。一発これを聴いてしまうと若書きの交響曲とは思えない激しい感情の発露がある曲ととらえてしまいます。
ワルター指揮の古典的名盤も好きですが、ここはテンシュテットに軍配。
マイベスト交響曲第2番(復活)
メータ指揮ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
いろいろ聴きましたが、テンシュテット、バーンスタイン、ホルヴァート、アバド、ジンマン、、、迷いに迷ってメータの若いころの録音。これは激しさもあり、ウィーンフィルの軟らかい音色も楽しめて最高な1枚。
聴いていないが気になるのはノイマンが晩年に録音したもの。
マイベスト交響曲第3番
ジンマン指揮チューリヒトーンハレ管弦楽団
この曲は全体に美しい音色で響かないと。
特に児童合唱が入る第5楽章、美しいアダージョの第6楽章など、聞かせどころ満載の100分。
アバド&ウィーンフィルと迷いましたが、録音の良さと見通しの良さでジンマンを挙げました。
マイベスト交響曲第4番
アバド指揮ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
アバドの最初の録音のほう。独唱のシュターデが私には好みの声。また長大な第3楽章も美しい。少し邪悪な部分が後退した感じになる演奏だが、自分の好みからするとこれ。
次点はバーンスタイン指揮コンセルトヘボウ。ボーイソプラノで歌わせたもの。評論家はこぞって失敗した演奏というが私は全然そうは思わない。
マイベスト交響曲第5番
ショルティ指揮シカゴ交響楽団(1970年録音)
クーベリック、バーンスタイン、テンシュテット、と名盤ひしめき合うところで、ショルティを選出。
徹底したスーパードライな音楽づくり、決して感傷的ならず、曲の骨組みをさらけ出すような極めて個性的な音楽づくり。
次点はバーンスタイン指揮ニューヨークフィルのもの。これは逆に感情をたっぷり入れ込んだ対照的な演奏。
マイベスト交響曲第6番(悲劇的)
テンシュテット指揮ロンドンフィルハーモニー管弦楽団(LIVE)
この演奏でこの曲の本当のすごさを知った思いがする。壮絶としか言えない。音楽というのはここまで残酷で凄惨な表現ができるのか、と思った演奏。
次点はジンマン指揮チューリヒトーンハレ管弦楽団。これはガラスのような透き通った音が印象に残る。
マイベスト交響曲第7番(夜の歌)
クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団
異形の怪演、ではある。テンポもデフォルメももう現代までこの領域に達した演奏はない。
次点はショルティ指揮シカゴ響。明快でいわゆるハイビジョン的な音。くっきりとした音を出し、この茫洋とした音楽になりがちなところをしっかり聴きとれるような音楽を作ていると思う。クレンペラーと聴き比べるとまるで同じ曲に聴こえない。
マイベスト第8番(千人の交響曲)
ショルティ指揮シカゴ交響楽団
これはなぜか最近録音がメチャクチャ多いので、選択肢は広いが、結局この演奏を聴いちゃうんだよねーというディスク。
ショルティのいいところは複雑な曲でもスカッと見通しよく明快に聴かせるところだと思うが、この曲ではやはりその美点が生かされていると思う。
次点は超豪華なソリストのアバド指揮ベルリンフィルハーモニー管弦楽団。
マイベスト交響曲第9番
バーンスタイン指揮イスラエルフィルハーモニー管弦楽団
この曲だけは私はバーンスタインしか聴いて感動できるものはない。彼のたくさんある第9番の演奏(私は5種類聴いた)のなかで最も円熟と共感を感じさせるものがこのイスラエルフィルとの演奏。
次点はカラヤン指揮ベルリンフィルのライヴ録音の方。
ここまで徹底的に練りこんだ演奏もない。カラヤンはこの曲でバーンスタインに真っ向勝負をしている。おそらくきっとこの曲のライヴ録音を出した理由はバーンスタインへのアンチテーゼなのだと思う。
マイベスト交響曲第10番(D.クック版)
ハーディング指揮ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
以前は未完成の曲を他人が無理やり曲に仕立てた、ふてえ野郎だとイロモノ扱いされていたが、最近は全曲の録音も増えて選択肢が広がった。
ザンデルリンクやラトル、ギーレン、このあたりが好きな方だが、ハーディングはあたかもすでに完成された古典的な作品のように丁寧に作りこんでいると思う。オケがウィーンフィルだからなおさら響きが美しい。
マイベスト 大地の歌
ショルティ指揮シカゴ交響楽団
これは本当に全くの自分の好みになります。この曲の無常観、厭世観、すべてを内包する大地。。これを表現できている演奏はかなり限られてきます。指揮者でいうと、ワルター、クレンペラー、バーンスタイン、てところですが、実はショルティがスゴイのではという気がしています。
情感が表に出すぎずかつ、非常に客観的に音楽に立ち向かったような演奏で、知らない人はぜひ聴いてみることをそ薦めします。
次点はクレンペラー。独唱のルードヴィヒとヴンダーリヒが最高。
気になるのはノイマン。日本で発売されたかどうかはわかりませんが、チェコフィルを振ったものがスゴイという話です。
以上。
とりあえず、マーラー覚書はいったんここまでにします。また気づいたときに書きます。