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イトウの音と本の綴織

【読書】 プラトン「饗宴」

 

饗宴 (光文社古典新訳文庫)

饗宴 (光文社古典新訳文庫)

 

 

 前半のソフィストたちのエロス賛美は後半のソクラテスの話の前座として楽しんだ。エロスは何を求めているのか。美しいものの中で、生み、子を成すことだ。エロスはよいものを永遠に自分のものにすることを求めている。この理由によりエロスは不死を求めていると考えなけらばならぬ。作品の後の解説が秀逸で詳しい。解説を読んだら、また機会を見て再読したいくらいだ。

誤解が多いので書いておくが、 

プラトンも当時のギリシャの考えもエロス=同性・異性との肉欲関係のみととらえていない。

対話相手が子を生み出す(つまり自分の考えからを提示する)ことを促し、そして生まれた子を吟味し、育てていこうという営みにほかなりません。精神に働くエロスとはまさに、哲学的対話を促す力なのだといえるでしょう。(298頁)

 

少年愛も少年が青年になるまでに知力体力などさまざまな力をつけさせて行くことが中心に置かれており、性愛の関りはその一部に過ぎなかった。

そういった当時のギリシャの価値観や生活風習の解説も詳しく、酒の入った砕けた宴会という場面設定も相まってギリシャ哲学入門として読むにふさわしい本だと思う。

 

エロスという概念が個人的な性欲に終わることなく政治に至るまで、人間が美しいものや立派なものへの衝動を持っていること、その根本にエロスがあるということがしめされている。その源は人間は有限である存在だからこそ、そこから生まれた(子)ものを育てて行こうという欲求につながっているということだと思う。

あまり書いてしまうと本書の書き写しになってしまう。ぜひ気楽に読んで、よくわからなかったら先に巻末の解説を読んでしまうというのもアリだと思う。