【読書】 ヴォルテール「カンディード あるいは最善説」
家庭教師で哲学者のパングロスが諭す「すべてが最善である」を真に受けて育つカンディード。クネゴンデ姫と結婚するために、ヨーロッパ中から南アメリカまで駆け巡る。どれだけ最悪なことをがおきても、パングロスの最善説を信じてきたのだが…。
巻末のリスボン大震災に寄せる詩も示唆に富む。
ヴォルテールの投げかけたテーゼは極めて深くて現代性もある。ルソーやカントを引き合いに出す解説も考えさせられる内容で、じゃあ最善説が結局ダメなのか、という結論に終わらない、いやむしろ、議論の火種になっているところも鋭い。
カンディード自身も周辺の人もすべて災厄、身の危険、あるいは死に追いやられる。
それでも、「この世に起こることは正しく、善である」と信じるカンディードはある意味滑稽であると感じていた。
恋人が連れ去られ、強姦され、家庭教師が傷つけられ、死屍累々の中、カンディードは死体を乗り越えつつ進む。
作者ヴォルテールも最善説を批判的はあるが、ここに宿命論、ペシミズムを持ち込むこむことは至極簡単である。
しかし、そう簡単ではないと思う。
「お話は結構ですが」「とにかく、ぼくたち、自分の畑を耕さなきゃ」