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イトウの音と本の綴織

ネヴィル・マリナー追悼。モーツァルトの大ミサ曲

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モーツァルト ミサ曲ハ短調 K.427

ネヴィル・マリナー指揮アカデミー・アンド・コーラス・オブ・セントマーティン・イン・ザ・フィールズ

マーガレット・マーシャル(ソプラノ)

フェリシティー・パルマー(アルト)

アンソニー・ロルフェ・ジョンソン(テノール

グイネ・ハウエル(バス)

ラスロ・ヘルタイ(合唱指揮)

 

モーツァルトのいわゆるハ短調ミサ、大ミサと言われる、未完の名曲。

マリナーは1990年代にこの曲を再録音していて、これはおそらく70年代の録音と思われる。

新録音はのちに聴きなおすことにしてこの旧録音、やはりマリナーだけあって端麗ながらも細かな表情付けも生き生きして、合唱の水準も極めて高く、この時代にして素晴らしいものだと思う。

80年代に入ると、古楽器演奏の録音が多数出てくるのもモーツァルト演奏の流れであるが、そのなかでも現代楽器を使った演奏の中でマリナーのこの旧録音は決して色あせない高水準にあると思う。カラヤンバーンスタインといった巨匠ですらこの曲については決して完全と言われるものではないが(特にカラヤンの合唱の水準の低さ)、比べるとマリナーの録音は群を抜いてクオリティが高い。

まずテンポの決め方が絶妙。キビキビしたモーツァルトの躍動感を犠牲にせず、音の運びが非常に自然に感じる。逆に言えば自然すぎて個性的に感じられないのが難点と言えば難点なのかもしれない。

しかし、フーガの部分やフレーズの掛け合いなど、モーツァルトの音楽の愉悦も十二分に味わえ、この曲のメルクマールともいえる中庸さを備えていると言える。

手っ取り早く言えば、この曲を聴くならまずマリナー盤を聴けってことです。