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イトウの音と本の綴織

【読書メーター】2016年読書まとめ(一部欠損)

前後しましたが、昨年の読書の振り返りをします。夏の数か月、データを入れてなかったので、欠損部分がありますが、ざっと100冊ほどの読書量でした。体調不良を含めると、まあまあでした。来年は200冊くらいは読もうと思います。

2016年のベスト本

1位 井伏鱒二 黒い雨

黒い雨 (新潮文庫)

黒い雨 (新潮文庫)

 

 2位 フランクル 夜と霧

夜と霧 新版

夜と霧 新版

 

 

3位 ドストエフスキー カラマーゾフの兄弟

 

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

 

4位 戸川純全歌詞解説集ー疾風怒濤ときどき晴れ

 

戸川純全歌詞解説集――疾風怒濤ときどき晴れ (ele-king books)

戸川純全歌詞解説集――疾風怒濤ときどき晴れ (ele-king books)

 

 

5位 石井光太 絶対貧困

 

絶対貧困―世界リアル貧困学講義 (新潮文庫)

絶対貧困―世界リアル貧困学講義 (新潮文庫)

 

 

 

 

 

以下読書メーターでの感想。

 

2016年の読書メーター
読んだ本の数:83冊
読んだページ数:21411ページ
ナイス数:1953ナイス

超訳 ニーチェの言葉 エッセンシャル版超訳 ニーチェの言葉 エッセンシャル版感想
以前Kindleで読んだ完全版を文庫のエッセンシャル版で再読。 力強い言葉が満載。ニーチェってどうもとっつきにくいんだよな〜という人はこれ一冊読んでみるといいかもしれない。 私は今ツァラトゥストラと真っ向勝負してます。
読了日:1月5日 著者:
人生が輝く引き寄せパワー人生が輝く引き寄せパワー感想
やりたいこと大好きなことをすること、喜びワクワクすることを徹底的に、しかも気負わずに行なう。 やりたいことがわからない人にも気づきが生まれるようにちゃんと書いてあるところもあり、嬉しい。 こういうスピリチュアルな本はどこかホントかいな、という部分は多分にあるが、それを差し引いてもやりたいことをする素晴らしさを軽やかにしかも熱く語るあたり、自分自身の糧となったように思う。 社会的な成功より個人の喜び、幸せ感。
読了日:1月6日 著者:奥平亜美衣
人生で大切なことは、すべて「書店」で買える。人生で大切なことは、すべて「書店」で買える。感想
さらっと読んでしまったが、なかなか示唆に富んだ内容だった。これから読書してみようと思うが、どう手をつけていいのかわからないという人にはヒントになるキーワードがいっぱい。そこそこ読書している人もなるほどねと思うところがあると思う。私もそういうやり方があったのか、と思うところがあり、読んでよかった。
読了日:1月14日 著者:千田琢哉
人生をいじくり回してはいけない (ちくま文庫)人生をいじくり回してはいけない (ちくま文庫)感想
ゲゲゲの鬼太郎で育った私としては水木先生の生き方、戦争での体験などを追体験できる格好の本。 高度に文明化された日本が忘れてしまったこと。神秘体験。 ひょっとして最近スピリチュアルな考えが蔓延しているのは日本があまりに窮屈で、妖怪さえも住めなくなりつつあるような反動ととしてあるのかな、とふと思ったりもした。
読了日:1月16日 著者:水木しげる
黒猫/モルグ街の殺人 (光文社古典新訳文庫)黒猫/モルグ街の殺人 (光文社古典新訳文庫)感想
推理小説の先駆け的な作品、というだけにとどまらない。 短編集ながらここまで楽しめるものとは思ってもみなかった。 文中、急に殺意に目覚めたり、死の恐怖からの大どんでん返しの結末があったり、これは一筋縄ではいかないのがポーの面白いところだろうか。 キンドルで読みました。
読了日:1月21日 著者:ポー
今日から人生を変えるためのエンジンになる本今日から人生を変えるためのエンジンになる本感想
はあちゅうさんて自分の内面の掘り下げ方が実にうまい。 小難しいことは言わずに簡単な言葉で書かれてある。自分も悩み、考えながら生きてます、ってさらけ出す。なかなかこれが出来ないんだな。
読了日:1月21日 著者:はあちゅう
夜間飛行 (光文社古典新訳文庫)夜間飛行 (光文社古典新訳文庫)感想
サン=テグジュペリの代表作の一つ。冷徹、勇気、挑戦、哀しみ、すべてない交ぜとなって読んでしました。訳者のあとがきが秀逸。作者がいかに天才的な文筆家であったかを克明に解説。こういう作品はまた何度か読みたくなるから不思議なもの。堀口大學など他の訳者のバージョンも読んでみたい。
読了日:1月24日 著者:サン=テグジュペリ
アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)感想
夢を追う時すべての答えを自分の心のうちに求めることを繰り返し繰り返し語られる、その螺旋状に上昇する感覚がたまらない。 いろいろな読み方があると思うが、久々においしい児童文学の香りをかいだ感覚。
読了日:1月26日 著者:パウロコエーリョ
わたしはマララ: 教育のために立ち上がり、タリバンに撃たれた少女わたしはマララ: 教育のために立ち上がり、タリバンに撃たれた少女感想
女性に教育を、と訴える活動家マララの自叙伝的書籍。 前半パキスタンの問題が書かれているが、やや冗漫ながらも、情勢の凄まじさに背筋が凍る。にもかかわらずティーンエイジャーの彼女からの目線がある意味和みを与えてくれる。 前半が退屈という人は最終章のマララが国連本部で訴えた、教育の大切さのスピーチをまず読むことをお勧めする。
読了日:1月27日 著者:マララ・ユスフザイ,クリスティーナ・ラム
わたしはマララ: 教育のために立ち上がり、タリバンに撃たれた少女わたしはマララ: 教育のために立ち上がり、タリバンに撃たれた少女
読了日:1月30日 著者:マララ・ユスフザイ,クリスティーナ・ラム
天上の飲み物 (Kindle Single)天上の飲み物 (Kindle Single)感想
Kindlesinglesより。 不死身の吸血鬼が現代日本に大学生として舞い降りて日本人の女性と付き合う話。短編なので15分くらいで読み終えた。 個人的には死を恐れるってことも、人間ならではの幸福なのかもねと思った。
読了日:1月31日 著者:三浦しをん
光文社古典新訳文庫・駒井稔編集長が熱く推奨する「今こそ読まれるべき古典」79冊光文社古典新訳文庫・駒井稔編集長が熱く推奨する「今こそ読まれるべき古典」79冊感想
誤訳、意訳、毀誉褒貶が多い古典新訳文庫。 私も数冊読んでいるが、誤訳かどうかわからないが現代の最も感覚で読めるものが多いと思う。 これを読んでおいて、他の訳者の同作品を読むのもまた一興。
読了日:1月31日 著者:光文社古典新訳文庫編集部
たった2分で、自分を超える本。 心の「格差」を逆転する64のビジョンたった2分で、自分を超える本。 心の「格差」を逆転する64のビジョン感想
格差は無くならないが、格差を超えることはできる。 格差は他人に押し付けられるものではなく、自分で選ぶことができる。 格差は闘うものではなく、活かすもの。 特に前半がいい。 決めつけ調にズバズバくるから刺激が強いが、2回3回と落ち着いて読むと、納得がいく。 ちょっと頭に刺激を入れたい、というならば結構効くと思う。
読了日:1月31日 著者:千田琢哉
辻征夫詩集 (岩波文庫)辻征夫詩集 (岩波文庫)感想
現代詩と言っても奇を衒わず、難解な言葉は使わない。詩人そのものの素直な表現として伝わってくるところがいい。 辻さんの詩は言葉は簡単だけれど、少し遊んで実験的な表現をしている作品もあり、所々で新鮮な驚きと発見をする。それがこの人の詩人たるところなのだなとも思った。 巻末の谷川俊太郎さんとの対談は互いに言いたい放題でとても面白かった。
読了日:2月1日 著者:辻征夫
日本国憲法 (ハルキ文庫 い 17-1)日本国憲法 (ハルキ文庫 い 17-1)感想
日本国憲法の全文と伊藤真氏の意見が書かれたもの。 憲法全文を読んだのはひょっとして初めてか?中学校の頃部分的には読んだし、憲法の内容については学んだものの、続けて全部読んだのは初めてだ。 日本人として非常に恥ずかしいことだが、読んでいると今の政治は憲法違反だらけだということ。 ヘイトスピーチ、暴力行為など人権問題しかり、憲法を自分たちのいいように変えられる立憲主義の蹂躙しかり。 憲法は日本人なら分かっても分からなくても、読んでおく、そして時に及んで読み返すということをしていくべき。公教育でも家庭教育でも。
読了日:2月2日 著者:伊藤真
知ろうとすること。 (新潮文庫)知ろうとすること。 (新潮文庫)感想
対話形式で読みやすい。東日本大震災で起きた福島での原発事故による放射能漏れ事故をあらためて話す。科学的思考が一般社会の人の思考とが乖離しているという目線を共通理解として話が進む。放射能汚染がじゃあ一体どのくらいの程度なのか。健康への影響はどうなのか。 まずそれは科学的な数値として示されなければならない。 今でも原発への不信感は全国的にもヒステリックなほどあり、一石を投じる意味合いも本書にはあるのでは? 見えない不安に怯えるよりは、こうした科学的でスッキリ明快に考えたほうが前向きにな行動ができるのでは。
読了日:2月3日 著者:早野龍五,糸井重里
そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
ミステリーはネタバレ厳禁なので書けないが、最後の一文までしっかり読めて、充実した読後感。さすがミステリーの古典的名作だけはある。古典というと古臭く感じるかもしれないが、これほど巧妙な仕掛けは単にミステリーの枠にとどめておくのはもったいない。結局2日かけて読むのが1日とちょっと。数時間で読んでしまった。読んでいない人にはおススメできる作品。
読了日:2月5日 著者:アガサ・クリスティー
カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)感想
積ん読本からようやく読み始めた。これは非常に人間臭い、いや男臭い小説だこと!父親のフョードルのギンギンギラギラな性質の表現がえぐい。いかに俗悪で好色であるかをここまでえげつなく表すのはすごい。 想像よりも動的で躍動感のある訳にも関心。続いて明日から第2部に突入しよう!
読了日:2月7日 著者:ドストエフスキー
山月記山月記感想
むかーし読んだ記憶があるようなないような、で改めて読んでみた。 これ元ネタ、カフカの変身では? こちらは虎になってしまう話だが、詩人になるのもなんになるのも突き詰めるとこうなってしまうのか。。。 今の私としてはあまり突き詰めない方が精神衛生上良いと思っているので、結構客観的に読めました。
読了日:2月9日 著者:中島敦
読書力 (岩波新書)読書力 (岩波新書)感想
冒頭から、本は「当然読むべきもの」から「別に読まなくてもいい」ものに変化してしまった現在日本に警鐘を鳴らす。 読書の習慣は日本の地力であると力強く説く。 ではどうやったら読書力はつくのか、それが具体的に書かれている。 いい意味で、読書する者として身の引き締まる思いがした。
読了日:2月9日 著者:齋藤孝
墜落遺体 御巣鷹山の日航機123便 (講談社+α文庫)墜落遺体 御巣鷹山の日航機123便 (講談社+α文庫)感想
あの御巣鷹山の航空事故の遺体の身元確認班長の経験からしか出てこない現実の数々に言葉が出ない。これは本を読んでいただくしかないが、遺体確認500体を超える作業は想像を絶する。 あの年、私は高校1年生で部活の合宿の帰りのバスの中だった。ふと坂本九さんの上を向いて歩こうを口ずさんでいた。 帰宅したらテレビは事故の話題一色だった。九さんもあの事故の犠牲者だった。そのことははっきりと覚えている。 もうあれから30年。命、人の絆、そういう抽象めいた言葉は、この本に書かれている現実を経て語られてこそ心に響くのだろう。
読了日:2月12日 著者:飯塚訓
本音で生きる 一秒も後悔しない強い生き方 (SB新書)本音で生きる 一秒も後悔しない強い生き方 (SB新書)感想
やりたいことを見つけて、ノリとフィーリングでチャレンジするだけ。 PDCAを繰り返す。仕事だけではなく、プライベートにも応用できる。 サクリと読めてしまう。いわゆるシンプルイズベスト。飾らないのがホリエモン流。私もこういうノリは好きだな。
読了日:2月13日 著者:堀江貴文
「哲学実技」のすすめ―そして誰もいなくなった・・・ (角川oneテーマ21 (C-1))「哲学実技」のすすめ―そして誰もいなくなった・・・ (角川oneテーマ21 (C-1))感想
中島氏の著作は数冊読んでいたが、今回は対話形式で進めていくかたち。哲学とは難しい哲学書を読みこなすことではなく、自身の疑問に、自分の「からだ」から考え、世間語の欺瞞から自己を解き放していく。時に悪についてきれいごとではない思考を押し進めるが、反発を強めながら一人一人学生は辞めていく。この本では最後は先生の方が裸の王様という展開か。誰もに勧められる本ではないが、哲学に何か疑問を抱いている人ならば、読んでみると面白いと思う。
読了日:2月20日 著者:中島義道
ソクラテスの弁明・クリトン (岩波文庫)ソクラテスの弁明・クリトン (岩波文庫)感想
ソクラテスの弁明」の方は翻訳が古いせいか、語調になれないせいか、読みこなすのに苦労した。「クリトン」は対話篇なので、こちらは問題なし。 内容は、ソクラテスの明晰な論理で総てを捉える賢人ぶりがわかる。のだが、現代的な眼で、いや私の観点からいくと、あまりに筋が通り過ぎていて、人間は本当にこうした境地に至ることができるのだろうかと考えてしまった。哲学するとは死を超えてしまうところまで行ってしまうのかと、人間そのものの存在について考える機会を与えてもらった気がする。
読了日:2月21日 著者:プラトン
飛ぶ教室 (光文社古典新訳文庫)飛ぶ教室 (光文社古典新訳文庫)感想
本来児童向けの作品であるが、大人でも十二分に楽しめた。子供への目線のまっすぐさ。蔑まない、見下さいない。ただただシンプルな言葉で子供の友情、大人の友情、そして大人と子供の友情。全てに垣根はない。 大学生の頃、この本面白いぜ、と勧めてくれた友人がいたことを思い出し、今更ではあるが読んでみた。あいつ、今どうしているんだろう。
読了日:2月24日 著者:ケストナー
自分を変える読書術  学歴は学<習>歴で超えられる! (SB新書)自分を変える読書術 学歴は学<習>歴で超えられる! (SB新書)感想
正直な感想、学歴は学<習>歴で超えられる、というサブタイトルが書かれている内容が正当なくらいで、あまりオリジナリティは読み取れなかった。堀氏の生い立ちは京大に行きたかったのに教師の一方的な考えで東大に行く羽目になったとか、イギリスで語学がダメだったけれど数学がクラス1番になったとか、学歴が問題じゃないと言いつつ、学歴自慢のオンパレードにしか読めない部分もあり、うーんなんだかなぁ。 まあ読み手の自分ももうこう言う読書術系の本はもう卒業した方がいいなちうのが結論。
読了日:3月2日 著者:堀紘一
カラマーゾフの兄弟2 (光文社古典新訳文庫)カラマーゾフの兄弟2 (光文社古典新訳文庫)感想
第2巻にして、もはや終盤のような充実感。要は賛キリストとアンチキリストの壮絶なバトルの様相。 巻末のブックガイドも参考にして読み進めたが、さすがに疲れた。名作の名作たる充実感。ちょっと他の本読んでから第3巻に行きます。
読了日:3月6日 著者:ドストエフスキー
偏愛蔵書室偏愛蔵書室感想
レファレンス本として使用。有名無名の100冊から成す。著者諏訪氏の読書遍歴を読んでいるかのような気にさせる。読んでいるとつい、その本を読みたくなる。読んでその奇天烈さに悶絶することも多いが、私にとっての座右の本。
読了日:3月13日 著者:諏訪哲史
大人のための読書の全技術大人のための読書の全技術
読了日:3月16日 著者:齋藤孝
夜と霧 新版夜と霧 新版感想
この本は死ぬまでには絶対読むべきだと思う。つまり、読み終えるまでは死んではならないということだ。
読了日:3月16日 著者:ヴィクトール・E・フランクル
マンガで学ぶ 心屋仁之助の お金を引き寄せる体質改善!マンガで学ぶ 心屋仁之助の お金を引き寄せる体質改善!感想
気持ちが落ち込んだ時に読んだ。幸せな気分になること、豊かな気持ちになる事、好きな事をしてい時、それが大切。自分には何をしても根本的な価値がある。そう思えた。漫画版だったが、深く考えさせるものがあった。
読了日:3月24日 著者:心屋仁之助
がんばらない成長論がんばらない成長論感想
これはイイっすね。ゆるゆるの成長論。どこか片意地張っていた自分には温泉気分で肩揉んで気持ち。すでに実践してます。
読了日:3月26日 著者:心屋仁之助
大世界史 現代を生きぬく最強の教科書 (文春新書)大世界史 現代を生きぬく最強の教科書 (文春新書)感想
世界史を現代の社会に照らすとこうなるという超具体的な新書。すぐ読めるが、学び忘れてきた膨大な世界史を再勉強の気にさせられる目もくらむ書物でもある。
読了日:10月16日 著者:池上彰,佐藤優
ニーチェ入門 (ちくま新書)ニーチェ入門 (ちくま新書)
読了日:10月20日 著者:竹田青嗣
下町ロケット (小学館文庫)下町ロケット (小学館文庫)感想
ドラマも全く見ないで積読して半年。そろそろ読むかと思ったのが今日の昼前。 夕飯前に読了。400ページ一気読みしたのは久しぶり。 企業同士の潰しあい、企業戦士のそれぞれの立場の人間模様、そして夢を忘れない熱い心。こんなドラマティックな本も時にはいいな~と時に緊張、時にほぉと嘆息しながら読み終えた。 池井戸潤さんの本は初めてだったが、これははまりますわ。
読了日:10月23日 著者:池井戸潤
黒い雨 (新潮文庫)黒い雨 (新潮文庫)感想
重松の被爆日記を書き綴る合間で姪・矢須子(黒い雨に打たれる)の様子を描いた戦争文学。 重松の日記の淡々とした文体が8月6日の広島の街と人の様子を深く重く描く。 たしかに、読み通すのはエネルギーが必要。 変に悲惨さを強調するわけでもなく、感情的にもならず、えもいわれぬ人間の業の深さを感じさせる井伏のただならぬ強い意志を感じる。 どんな意志なのか、それは読んだ者しかわからない。日本人だから、そして今だからぜひ読んでほしい1冊。
読了日:10月30日 著者:井伏鱒二
砂の女 (新潮文庫)砂の女 (新潮文庫)感想
教員である男が置手紙を残して失踪する。男は昆虫採集に出かけた砂地の部落で女の住む家に砂掻き出し要員として部落に拉致状態にされてしまう。 男は必死に脱出を試みるが、すべて失敗に終わる…。ストーリーを追えばそういう悲劇話だが、男の焦り、衝動、情動、諦念、がぐいぐいと読み手を引き付けていく。形のない砂という存在と、男と過ごす女の変幻する描写が重なり合う。読み始めは訳の分からない物語だと感じたが、男の焦燥感の描写の巧みさにハマり、読み進めることができた。これは日本文学というより世界文学のひとつと言っていい。
読了日:11月3日 著者:安部公房
思考のレッスン 発想の原点はどこにあるのか (講談社+α文庫)思考のレッスン 発想の原点はどこにあるのか (講談社+α文庫)感想
前半竹内氏の文章。後半は二人の対談公演の記録。前半の竹内氏の人生経験からの主張、文系理系の壁を乗り越えて日本人はルネサンス人を目指そうというもの。現状ではそういう思考をできていない日本人が多いな、と思う。私自身も文系という枠に囚われていた。後半の対談に入ると、より具体的な話、日本の危うさや閉塞についても語られる。本の題名からすると突っ込みが足らない気はするが、文理に囚われずに興味があればどんどん学ぶべし、そんな元気が出る本だ。
読了日:11月3日 著者:竹内薫,茂木健一郎
眼球譚(初稿) (河出文庫)眼球譚(初稿) (河出文庫)感想
ついに読んだ、バタイユ処女作「眼球譚」倒錯のエロティシズムと死、冒頭から体も頭もグルグルするようなえぐい展開にギョッとする。理性で考えると猥褻なポルノグラフィーにしか読めないが、からだのあらゆる部分、心臓はもちろん股間まで総動員して読んでいくと、この作品のある種の美しさを見出すことができる。ただし、そこまで来るのには様々な経験がないと、おそらく単なる変態小説にしか読めない。要は青少年諸君にはちょっと毒が強すぎるということだ。戸川純の曲で眼球奇譚という歌があるが、この作品からの影響かとずっと気になっている。
読了日:11月3日 著者:ジョルジュバタイユ
こゝろ (角川文庫)こゝろ (角川文庫)感想
確かに高校2年生の時に教科書で学んだ。しかし、こうして齢を重ねて読み直すと、漱石の強烈な人間の内面の表現力に圧倒され、お腹がキリキリ痛む。追い詰められる。すごいと言うしかない。「先生と遺書」は圧巻。一方で日本人の倫理観を問うている点で、現代ではこんなことで自分(先生)を追い詰めることもなかろう、という感想を見出すことも可能のような気がする。やっぱり日本人というのは性愛については億手なのかもしれない。
読了日:11月6日 著者:夏目漱石
語彙力こそが教養である (角川新書)語彙力こそが教養である (角川新書)感想
斉藤氏の音読素読のススメは私も高校時代古文漢文で必ず行っていたが、効果はてきめんだった。最近は音読素読していないというのが反省材料と気づかされた。また、言葉の誤用については、恥ずかしいことに、かなり間違って理解しているものが多いのを気づいて、故事成語辞典でも探してきて読み直そうかと思う。読書をしていてもなかなか読みこなせない、人とのコミュニケーションがうまくいかないと思ったら、ひょっとして語彙力が不足しているのかもしれないと疑ってみてもいいかもしれない。この本自体読みやすいものなので、おすすめです。
読了日:11月6日 著者:齋藤孝
快楽主義の哲学 (文春文庫)快楽主義の哲学 (文春文庫)感想
澁澤龍彦のことだからどこまで危険な言説に及ぶのか期待した。期待したまでの快楽ぶり変態ぶりではなかった。いや、期待し過ぎた私がかなりアレなのかもしれないが…。とは言え、どこぞの新書や自己啓発書などと比べ物にならないほどの刺激に満ちている。幸福を求めるのではなく、人間本来の快楽追及を勧めるくだりはさすがというほかない。日本人では岡本太郎深沢七郎の名を挙げ、彼らのような生き方が指標になるとか。私は坂口安吾などもそれに通じると思う。
読了日:11月7日 著者:澁澤龍彦
人生エロエロ (文春文庫)人生エロエロ (文春文庫)感想
人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。と始まるみうらじゅん氏のエッセイ集。内容は完全無欠のエロ。でもなんだかどこか微笑ましくて昭和な雰囲気を醸し出しているところが良くて、通勤途中に(Kindleで)読んで、笑いを抑えるのに必死になったこともしばしば。馬鹿だねえと思いつつ、自分もその馬鹿なひとりだと自覚して読み切りました。巻末の阿川佐和子さんとのトークも必読。
読了日:11月8日 著者:みうらじゅん
カフカ短篇集 (岩波文庫)カフカ短篇集 (岩波文庫)感想
あまりに謎が多すぎて、ここで書くにはまだ1,2年寝かせないと無理。昨日少し書いたので付け加えるとするならば、カフカを読んだらものすごい想像力がたくましい人間になりそう、いや人間ではなくもう別の生物かもしれない。特に「判決」「流刑地にて」は特に劇物扱い。
読了日:11月10日 著者:カフカ
カフカ短篇集 (岩波文庫)カフカ短篇集 (岩波文庫)
読了日:11月10日 著者:カフカ
かわいい女・犬を連れた奥さん (新潮文庫)かわいい女・犬を連れた奥さん (新潮文庫)感想
人生初チェーホフ。人間描写が鋭く細かく、そして躍動感を感じさせる。ストーリーを楽しむというより、人間味あふれる人々の人生のある時温かく、ある時厳しい、その様を味わう。人生いろいろ、ここまで多様な生きざまを描かれると読み手には深い充実感が待っているのだ。そしてロシアの風景がまるで自分の心象風景のように残った。
読了日:11月10日 著者:チェーホフ
世界史としての日本史 (小学館新書)世界史としての日本史 (小学館新書)感想
「日本は特別な国」という思い込みを捨てろ!という表紙の言葉に惹かれて読んだ。戦後の日本人総バカ化推進がGHQの策略なら、もう十分目的が達成されている。今の我々日本人には教養がない。自国のことを知的に冷静に観ることができない。それは大学生までに勉強を分断的(6・3・3制)にしかできなかったからであり、それによる勉強そのものが受験目的化、就職目的化だからでもある。大人になっても時間がないと言って勉強しない。日本の恥部を曝け出した二人の対談にはうなずく点が多かった。おすすめ。
読了日:11月12日 著者:半藤一利,出口治明
世界から戦争がなくならない本当の理由世界から戦争がなくならない本当の理由感想
詰まるところ、人類の業の深さ、歴史から学ばない愚かさが戦争を繰り返すものなのか、、、、とかなり絶望的な気分にさせられた。日本も戦後70年間、戦争をしていないと言いながら、ベトナム戦争などでは裏からアメリカへ資金支援をしている点で自分の手を汚さない卑怯な国といえる。「本当に怖いのは異常な独裁者ではなく、それを支える国民の熱狂なのです」池上氏はそう指摘し、昨今の在日排斥、ヘイトスピーチが日本に少しずつ蔓延する状況を危惧している。歴史から学び、戦争を繰り返さないということ、これが現日本の最重要課題なのだと。
読了日:11月13日 著者:池上彰
賃労働と資本 (岩波文庫)賃労働と資本 (岩波文庫)感想
労働者は働けば働くほど労賃価値が低下し、ますます資本家の利潤は増えるという内容かと思う。現代でも機械化コンピュータ化するにつれ熟練工、専門職は不要になり、労働力もより低賃金で雇える国へ移行していく状況。まさにマルクスの指摘通りになっている。資本主義の本質がマルクスの時代から全く変わっていないことに愕然とする。 しかし、この翻訳はいかにも古めかしい。「逆比例」とは言わないだろう。多分「反比例」のことだろうが。
読了日:11月14日 著者:カールマルクス
黒猫・アッシャー家の崩壊―ポー短編集〈1〉ゴシック編 (新潮文庫)黒猫・アッシャー家の崩壊―ポー短編集〈1〉ゴシック編 (新潮文庫)感想
光文社古典新訳文庫でも読んだので一部再読。「黒猫」「落とし穴と振り子」「アッシャー家の崩壊」が特に強烈な印象。常に女性と死の匂いが漂う怪奇小説群。読んでいるこちら側が死に引き寄せられていくようで怖い。後年数々の作家に影響を与えた理由もよくわかる。
読了日:11月17日 著者:エドガー・アランポー
少女コレクション序説 (中公文庫)少女コレクション序説 (中公文庫)感想
人形愛、セーラー服、処女生殖、コンプレックス、匂い…澁澤龍彦が縦横無尽に繰り広げるエロスと倒錯の世界。古今東西の文献から様々な逸話が満載。単なるスケベ心で読んでいると痛い目に合う。ペダンティックともいえる澁澤氏の引き出しの豊富さは驚嘆するしかない。個人的には最終章のマンドラゴラについての記述が興味を惹いた。
読了日:11月18日 著者:澁澤龍彦
寛容論 (古典新訳文庫)寛容論 (古典新訳文庫)感想
フランス・トゥールーズにおける、プロテスタント、ジャン・カラス冤罪事件に端を発したヴォルテールの主張と活動の始終。当時のトゥールーズカトリックプロテスタントの対立が激しかったこともあって、その風当たりがこの冤罪事件を引き起こしたのだという。ヴォルテールは宗教派閥対立という不寛容さが根底にあるとし、ギリシャローマ帝国時代までさかのぼり、様々な寛容さを取り上げる。そして最後に「知性が虚弱な人々は、陰気な迷信に動かされ、そして考え方が自分たちと異なる人間を犯罪者に仕立ててしまう」という。これが不寛容さだ。
読了日:11月19日 著者:ヴォルテール
悲しみよこんにちは (新潮文庫)悲しみよこんにちは (新潮文庫)感想
18歳のサガンが書いた17歳の女の子セシルが主人公の小説。フランスだからか、普通に酒たばこやるんだよね~。恋愛でも父親レイモンもセシルも自由奔放、だけれど深い心情の部分で父への嫉妬、結婚する相手に決めたアンヌへの憧れとともにやってくる糞意地悪い策略。結末を含め、瑞々しいきらめきを感じる。まさに題名通りの小説。
読了日:11月19日 著者:フランソワーズサガン
カラマーゾフの兄弟3 (光文社古典新訳文庫)カラマーゾフの兄弟3 (光文社古典新訳文庫)感想
いよいよ問題の事件が発生し、ミーチャが容疑者として逮捕される。ここのくだりはスピード感があり、ミーチャの心情の吐露が無茶苦茶だがどんどん惹き付けられるところ。巻末の訳者の読書ガイドが非常にためになる。いよいよ第4部に突入する。
読了日:11月22日 著者:ドストエフスキー
カラマーゾフの兄弟 4 (光文社古典新訳文庫)カラマーゾフの兄弟 4 (光文社古典新訳文庫)感想
ミーチャが逮捕されて裁判にかけられるシーン。クライマックス。検察官の弁論も説得力が強く、有罪か?と思われるが、弁護人の弁論がさらに気持ちを揺さぶられる。さて、どうなるかは、読んでのお楽しみ。しかし、読んでも第5巻エピローグをすぐ読まなければ気が収まらない。恐るべき残尿感!
読了日:11月25日 著者:ドストエフスキー
カラマーゾフの兄弟 5 エピローグ別巻 (5) (光文社古典新訳文庫)カラマーゾフの兄弟 5 エピローグ別巻 (5) (光文社古典新訳文庫)感想
エピローグまで読了。嗚呼ついに読み終えたカラマーゾフの兄弟。大作だけに自分の読んだだけでは到底汲み取り切れないものは多くあったと思う。エピローグでの昇華は私には大波に打たれたような、そして青い空が見えたような。最終的にはアリョーシャがキーパーソンだったな。傑作なり。
読了日:11月25日 著者:ドストエフスキー
戸川純全歌詞解説集――疾風怒濤ときどき晴れ (ele-king books)戸川純全歌詞解説集――疾風怒濤ときどき晴れ (ele-king books)感想
私が30年以上愛してやまない戸川純。彼女の書いた全歌詞を彼女自身が解説。歌も知っているものがほとんどだったし、思い入れのある歌も多いので、自分自身の今までを重ねて読んだ。私にとっての彼女の最高の歌は「赤い戦車」。”生きるために生まれたんだと確信色”のくだりはあたかも私自身のために歌ってくれたように思えてました。彼女もこの歌には強い思いがあるようで、この歌詞の解説にはずいぶんページを割いて書いてくれてます。彼女の半生を振りかえる意味も持つ。私の生涯なかで最も大切な本となるだろう。今日、私の誕生日に読了。
読了日:11月27日 著者:戸川純
いい子になれって いわないでいい子になれって いわないで感想
フランスの名車ファセス・ベガを作ったジャンの幼い時の物語。勉強も集中できず、音楽も点でダメ。落書きばかりだった彼の勉強帳には車の絵がたくさん描かれていた。ジャンは途中で学校を退学になり、寄宿舎学校に行くが、兵役に行き、たくさんの技術経験をえることになる。ジャンが成功するまで親は彼に酷い仕打ちを与え続けた。この絵本にはあまり強調されてはいないが、いかに大人の杓子定規があてにならないことの典型だ。大人自身も自分の可能性にに知らず知らずに手枷足枷して自由を奪っているのではないかとも思った。
読了日:11月30日 著者:M.P.ダニノス
愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書)愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書)感想
この本を読んで、私は完全に愛着障害であることを知る。子供のころから親から否定され笑いものにされ、不当な評価をされ、時に屋根裏部屋に手足口を縛られ放り込まれた記憶がどんどん溢れてきて憎悪と悲しみでいっぱいになった。患っている精神疾患の原因になっているのでは?と常々思っていたのだが、誰からも(特に親)「そんな子供の頃のことを大人になってから引き出されても」という否定意見ばかりだったが妻から勧められたこの本によって、自分の歪められた心の根源がやはり幼少期にあったのだと悟った。
読了日:12月3日 著者:岡田尊司
新・リーダー論
大格差時代のインテリジェンス (文春新書)新・リーダー論 大格差時代のインテリジェンス (文春新書)感想
現代の世界情勢を語らせるのならこの二人は欠かせない。シリーズ第3弾。「新・戦争論」「大世界史」と読んでこれ。平和=格差か、平等=戦争か、という2択に現代が収斂されてきつつある指摘が印象的。トランプ新大統領出現がポピュリズムの象徴的な事件だったとすれば、アメリカ人が政治に変化を求めている人間が過半数いるということになる。さて日本にちては政治・経済のリーダーの薄っぺらさを指摘し、今後どうすべきかというところまでで、やや尻切れ。シリーズはまだ続きそう。今度は日本での教養のありかたの考えを読みたい。
読了日:12月3日 著者:池上彰
ぼくらの頭脳の鍛え方 (文春新書)ぼくらの頭脳の鍛え方 (文春新書)感想
読書メーターに登録し忘れていた、私のレファ本のひとつ。時々眺めて読んだ本をチェックしてみている。読むたびに、オッこれ面白そうだ、というのを発見するので手放せない。
読了日:12月3日 著者:立花隆・佐藤優
本の「使い方」 1万冊を血肉にした方法 (角川oneテーマ21)本の「使い方」 1万冊を血肉にした方法 (角川oneテーマ21)感想
読書メーターに未登録本。読書術、読書論は数あれど現代日本人が書いた本の中では一番ダイナミックで実践的だと思う。
読了日:12月3日 著者:出口治明
ひとはなぜ戦争をするのか (講談社学術文庫)ひとはなぜ戦争をするのか (講談社学術文庫)感想
9月ごろ読了?ページ数も少ないし、二人の巨人の書簡が読めるというのは貴重。戦争について書かれる。個人レベルでいえば、文化・教養のある人が増えれば戦争の起きる数も少なくなるということか。社会的にはやはり子供から大人までの教育の在り方が肝要ではないかと思う。学校教育そして生涯教育として教養を深めることが、重要だろう。
読了日:12月3日 著者:アルバートアインシュタイン,ジグムントフロイト
フランス文学は役に立つ! ―『赤と黒』から『異邦人』までフランス文学は役に立つ! ―『赤と黒』から『異邦人』まで感想
フランス文学有名無名作品から24作品のあらすじと講座。ブックガイドとしても秀逸で、読めば読むほど全編を読みたくなる。 とりあえず私はルナールの「にんじん」ヴォルテールの「カンディード」あたりから読むことにする。
読了日:12月4日 著者:鹿島茂
ツァラトゥストラはこう言った 上 (岩波文庫 青 639-2)ツァラトゥストラはこう言った 上 (岩波文庫 青 639-2)感想
竹山道夫訳での挫折から30年。無理やりでも読んでやるという意気込みで読んでみた。完全にニーチェの「力への意志」の息吹に圧倒された。完敗、ではあったが、下巻ではねじ伏せてやるという気合を持った。これは完全に格闘技である。
読了日:12月4日 著者:ニーチェ
ツァラトゥストラはこう言った 下 (岩波文庫 青639-3)ツァラトゥストラはこう言った 下 (岩波文庫 青639-3)感想
超人、永遠回帰、そのものをかなり直接に語られる。あまり深読みせず、どんどん読み進めたが、解説を読むと、キリスト教(聖書)やニーチェ著「この人を見よ」を読むとさらにニーチェの思想の広がりを感じられるに違いない。枝葉末節はともかく、ニーチェってやっぱりどこか壊れている。だからこそ、この自堕落な人間世界に嘔吐!嘔吐!嘔吐!と言い続けたんだろう。
読了日:12月7日 著者:ニーチェ
西脇順三郎詩集 (1975年) (青春の詩集〈日本篇 15〉)西脇順三郎詩集 (1975年) (青春の詩集〈日本篇 15〉)
読了日:12月9日 著者:西脇順三郎
赤毛のアン―赤毛のアン・シリーズ〈1〉 (新潮文庫)赤毛のアン―赤毛のアン・シリーズ〈1〉 (新潮文庫)感想
孤児院から老兄妹に引き取られたアンの11歳から16歳までの成長。カナダの細やかで豊かな自然とアンの感受性が二重写しになる。自分の娘が同じ年頃なので、アンの成長が重ねられて胸いっぱいになってしまった。完全にマシュウ目線だな。感受性の豊かさゆえに様々な事件、失敗を繰り返すアンだが、その中か徐々に成長を見出してゆく。この時期の子供の成長は著しいと本当に思う。だから愛情を与えれば子育ては大変だけど報われる、と思うよ。ビバ子育て!
読了日:12月10日 著者:ルーシー・モード・モンゴメリ
にんじん (新潮文庫)にんじん (新潮文庫)感想
児童虐待文学、そしてモラルハラスメントの典型を見る重要な作品。子供の頃、愛されずに否定され続けるということがここまで悲しいことか…私は痛いほどわかる。私の場合にんじんほどの精神的な虐待はなかったが、肉体的な虐待は相当なものだった。モラルハラスメントの問題としては、大人にとってもこの小説はかなり重要な意味を持つと思う。これを読んで自分のことのように痛みを覚えない人は、愛情たっぷりに育てられたか、虐待やモラハラをしている当事者なのかもしれない。注意して読むべし。
読了日:12月11日 著者:ジュールルナール
パパは楽しい躁うつ病 (新潮文庫)パパは楽しい躁うつ病 (新潮文庫)感想
どくとるマンボウこと北杜夫躁うつ病人生を振り返る、娘との対談集。内容に悲壮感はなく、躁状態になったときは株を売ったり買ったり、国を作ったり(?)と夫婦間でのバトルの話があるが、なぜか北家では笑いのネタになる。精神病を大っぴらに言えない時代から北杜夫躁うつ病を公然と認めていた。自分が精神科医ということもあるだろうが、病気への偏見はないようだ。個人的な感想として、まるで共感はできなかった。ここまで受容できる家族はまず考えられないし、私はかえってこの本を読んで気を重くしてしまったくらいだ。
読了日:12月13日 著者:北杜夫,斎藤由香
陰翳礼讃 (中公文庫)陰翳礼讃 (中公文庫)感想
のらりくらりと読み進めて今日読了。初谷崎。パチンコ屋やコンビニのように、どこへ行っても煌々と明るい現代にとっては、暗がりとは、恐怖であり、悪の温床であり、なくすべきものとさえ思われている部分がある。谷崎は陰翳に想像力を感じずにいられなかったのだろう。色恋事もあまり明るすぎるところじゃ、白けてしまうんでないか、と。
読了日:12月16日 著者:
読書は1冊のノートにまとめなさい[完全版]読書は1冊のノートにまとめなさい[完全版]感想
本を読みっぱなしにしないで読書ノートを作ろうと、参考にしてみた。気楽にできることがいい。なんといっても読んだことを残せるということ、何度も読み直して読書百遍に近づける、という仕組み化も素晴らしい。
読了日:12月17日 著者:奥野宣之
ガリバー旅行記 (角川文庫)ガリバー旅行記 (角川文庫)感想
「男女の結びつきは性欲のせいであり、その最中に子供の生まれることなんか考えていない。(中略)だから親は義務感を背負うこともなく、子も孝心を持たなくていい。」 どこが子供むけのお話なんだろう。ガリバーは4つの場所(島)へたどり着くが、最後のフウイヌム国渡航記が人間風刺を超えて、人間社会への嫌悪まで示している。ヤフー、ラピュタの元ネタはこの本にあり。
読了日:12月18日 著者:ジョナサン・スウィフト
絶対貧困―世界リアル貧困学講義 (新潮文庫)絶対貧困―世界リアル貧困学講義 (新潮文庫)感想
世界リアル貧困学講義、と銘打っただけあって、内容はまさしく世界の貧困。スラム編、路上生活編、売春編、と筆者の取材した世界の貧困の有様を書き綴ったもの。けっして悲惨さを強調しないところがよい。スラムだって路上生活者だって、売春宿だって、日本も対岸の火事ではない。すべてがつながってグローバルになっている。東京オリンピックまでには大量の外国人が入国し、様々な問題も起こるだろう。しかし、それは外国人=悪などという単純な図式ではなく、では読んだ自分には何ができるだろうか?という答えを自ら出すことなのだ。
読了日:12月19日 著者:石井光太
「ちゃぶ台返し」のススメ   運命をかえるための5つのステップ「ちゃぶ台返し」のススメ 運命をかえるための5つのステップ感想
ジャック‣アタリが「ちゃぶ台返し」?派手なピンクの表紙に突飛な邦題。要は国家、他者などにせいにして頼る<甘受者=要求者>にはなるな。今日の世界は耐え難い。もはやだれかがどうにかしてくれるという段階ではない。今こそ私たち一人一人が自分で対処すべき時である。本の中盤は偉人伝的なものなので流して読み、第1部と第4部を熟読。疾患を持っている私でもこの社会でやれることをあきらめずに探してみよう。何度も挑戦してみよう。そんな気になった。
読了日:12月20日 著者:ジャック・アタリ
古書店のオヤジが教える 絶対面白い世界の名著70冊 (知的生きかた文庫)古書店のオヤジが教える 絶対面白い世界の名著70冊 (知的生きかた文庫)感想
確かに、この70冊はほとんどが誰もが知っているといるものばかりだが意外と読んでいるものが少ない。来年はこれをベースに古典を読みこなそうと思う。ヘロドトス 『歴史』 // トゥキュディデス 『戦史』 // プラトン 『響宴』 // アリストテレス 『形而上学』 // 聖書 // カエサル 『ガリア戦記』 // プルタルコス 『英雄伝』 // スエトニウス 『ローマ皇帝伝』 // トマス・アクィナス 『神学大全』 // ダンテ 『神曲』 // イブン=ハルドゥーン 『歴史序説』 //
読了日:12月21日 著者:日比野敦
魂の読書魂の読書感想
いかに人生において読書が重要か、「読書のすすめ」店主が語る熱い読書指南。あまりに著者の思いが強すぎるためか、話題があちこちに飛んで、散漫な印象をうける部分もあるが、”「答えを」探すためでなく、「問い」を見つけるために読書は必要なのです。”というくだりは世の中に流されて自分から考えなくなった日本人への厳しい批判になっている。ブックガイドが秀逸。みんな「読書のすすめ」で本を買いましょう。
読了日:12月23日 著者:清水克衛
愛着障害の克服 「愛着アプローチ」で、人は変われる (光文社新書)愛着障害の克服 「愛着アプローチ」で、人は変われる (光文社新書)感想
克服しようと読んでみた。安全基地は家内が引き受けてくれることになる。両親はすでに変えようがないから、もう何も期待しない。そして、愛着障害の連鎖はしないように肝に銘じる。しかし、なかなか試練の道である。
読了日:12月24日 著者:岡田尊司
饗宴 (光文社古典新訳文庫)饗宴 (光文社古典新訳文庫)感想
前半のソフィストたちのエロス賛美は後半のソクラテスの話の前座として楽しんだ。エロスは何を求めているのか。美しいものの中で、生み、子を成すことだ。エロスはよいものを永遠に自分のものにすることを求めている。この理由によりエロスは不死を求めていると考えなけらばならぬ。作品の後の解説が秀逸で詳しい。解説を読んだら、また機会を見て再読したいくらいだ。
読了日:12月26日 著者:プラトン
ハツカネズミと人間 (新潮文庫)ハツカネズミと人間 (新潮文庫)感想
愚鈍だが怪力の大男レニーとレニーを温かく見守りながら寝食を共にするジョージ。二人は農場の期間労働者として各地を転々とするが、いつもレニーの起こすトラブルによって逃げ回る羽目になる。しかし、ジョージはレニーを見捨てず、いつ叶うかわからない楽園の話を語り続けるのである。結末はネタバレになるので書かない。結末は残酷でも、最後まで血の通った人間物語として感銘を受けた。救われない、それでも人間なのだ。
読了日:12月27日 著者:ジョンスタインベック
異邦人 (新潮文庫)異邦人 (新潮文庫)感想
むむむー。高校の時、理解不能で30年ぶりに再読。少しは理解が進むかと思われた。裁判の時、検察官が再三ママンの死の時に行ったムルソーの行為を非難し続けたが、現代に置き換えると、母の死の後、タバコを吸おうが、映画館へ行こうが恋人と会おうが、なんの問題があるのか?まったく不条理なことだと思えてしまう。もしかすると、その価値観の顛倒が今、この作品を積極的に読む必要があるのかもしれない。ムルソーはニヒリストかもしれないが、ただ当時の感覚からすると先を行きすぎていた、ということなのかもしれない。なんにしても問題作には
読了日:12月28日 著者:カミュ
戦略読書戦略読書感想
そもそもキャリアアップを狙うビジネスマン中心に書かれているが、そうでなくても十分刺激になった。本棚や自宅図書館の作り方などはワクワクするくらい。サイエンス、SF、漫画も紹介されており、ブックガイドとしても面白い。 できれば20代くらいのビジネスマンが読むと最も刺激になると思う。
読了日:12月29日 著者:三谷宏治
グレート・ギャツビー (新潮文庫)グレート・ギャツビー (新潮文庫)感想
バブリーな人生を絵にかいたような物語。底辺には恐慌や西部出身者の思いなどがある。毎晩繰り返される豪奢なパーティー。そしてあっけない結末。人によりけりだろうが、こういう人生もなかなか味わえないな。日本もバブルの時はこういう人は結構いた…。
読了日:12月30日 著者:フィツジェラルド

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